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 日産自動車と三菱自動車との合弁会社である株式会社NMKVがマネジメントを行い、開発が進められたことで注目を集めた軽自動車デイズ(三菱自動車はeKワゴン)は2013年の発売から累計約43万台を販売しました。初代デイズ(eKワゴン)の開発と生産は三菱自動車が主に担ってきましたが、今回発売した2代目デイズは企画から開発を日産自動車が行うなど、注目を集めています。エンジン、CVT、ハイブリッドシステムなどのドライブトレインとプラットフォームは全て新開発、更に先進運転技術のプロパイロットを設定するなど、日産自動車が持つ技術の粋を惜しげもなく軽自動車デイズに注いだといっても過言ではありません。フロントマスクには、今や日産の顔となったVモーショングリルを採用した新型デイズは3月28日に発売となりました。

NAエンジンの標準モデルとハイブリッド車のハイウェイスターを設定
 新型デイズは豊富なグレード設定が特徴です。ガソリン車でNAエンジンを搭載した標準モデルとマイルドハイブリッドシステムを搭載したハイウェイスターに、それぞれ2WDと4WDが用意されています。また、ハイウェイスターにもNAエンジンとインタークーラーターボが着いたエンジンの2種類のドライブトレインが設定されています。豊富なバリエーションでクルマ選びの幅を広げる一方、ボディーカラーは、標準モデルに単色を11種類、ハイウェイスターには単色7種類とツートンカラー4種類をラインナップしています。
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 豊富なカラーバリエーションも新型デイズの特徴です


新開発のBR06エンジンを搭載
 新型デイズに採用されたエンジンはルノー日産アライアンスで新たに開発した659cc直列3気筒のBR06エンジンです。大きな特徴は全域にわたって向上させたトルク。最大トルクで約15%向上させ、NAで60Nm、ターボは100Nmまで向上させました。また、高圧縮比シリンダブロック、シリンダヘッド、そして水冷EGRシステムを採用することで、熱効率の向上にも繋げています。一方、ハイウェイスターに搭載したBR06エンジンには電子制御式ウェイストゲート付きターボチャージャーを採用しました。ウェイストゲートが電子制御式となったことで、更に効率のよい過給圧のコントロールが可能になりました。なお、NAのBR06エンジンのエンジンオイルにはSAE 0W-8が採用されています(ターボ付きBR06エンジンのエンジンオイルはSAE 0W-16を使用)。熱効率の向上、フリクションの低減などにより、燃費性能も向上しました。標準モデルの燃料消費率はJC08モードで29.8km/L (4WDは25.4km/L)、WLTCモードで21.2km/L(同18.8km/L)です。
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 BR06エンジン


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  BR06エンジン(NA)のトルク向上の推移

CVTを刷新し、フリクション低減と静粛性を向上
 新型デイズのトランスミッションは全車に新開発のCVTが採用されました。低フリクションを実現するスチールベルトを採用することで、前モデル比、約8%のフリクションの低減が実現しました。もうひとつの特徴はダブルピニオンタイプのプラネタリギヤの採用です。トルクコンバータとプライマリープーリの間にプラネタリギヤを採用する前後進切替機構を設置、ギヤノイズの低減を図ることで、静粛性も両立しました。一方、日産自動車の走行機能のひとつとして、エクストレイルなどに採用されてきたDステップが新型デイズに装備されました。CVTでありながら、まるでギヤがあるように段階的に変速することで、小気味のよい加速を味わうことができるDステップは、今回、軽自動車としては初めての搭載です。
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 新開発CVTのカットモデル


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 Dステップのイメージ

スマートシンプルハイブリッドシステム
 先述したとおり、上級グレードのハイウェイスターは全車ハイブリッド車の設定となっています。今回、このハイウェイスターに搭載されているハイブリッドシステムも新たに開発されたユニットのひとつです。その名もスマートシンプルハイブリッドシステム。アイドリングストップシステムのリスタートに使用するサブスタータとジェネレータを用いて、加速時にエンジンをアシストするマイルドハイブリッドシステムです。従来、日産自動車のマイルドハイブリッドはS-HYBRIDというシステムを用いてきました。これはメインとサブの2バッテリー方式を採用するシステムで、従来は2つのバッテリーとも鉛バッテリーを採用してきましたが、今回のスマートシステムハイブリッドシステムではサブバッテリーにリチウムイオンバッテリーを採用し、回生量とアシストのトルク領域を拡大しました。なお、エンジン再始動時にはメインバッテリーとサブバッテリーの接続を遮断するデュアルバッテリーリレーを採用することで、メインバッテリーに接続されている電装品の電源低下の防止と安定した電源の供給を行う工夫が施されています。
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 サブバッテリーのリチウムイオンバッテリーは 助手席の下に設置されています

新設計のプラットフォームで上級セダン並の居住空間を実現
 新たに設計されたプラットフォームも新型デイズの特徴のひとつです。ホイールベースは前モデルよりも65mm長い2,495mm。これにより室内を拡大、荷室、後席にゆとりのある空間を実現しました。とりわけ、後部座席はニールーム(車室内における膝周りのゆとり)を70mm拡大することで、上級セダン並みの居住空間を確保しています。また、荷室についても前モデル比135mmの拡大を図り、後部座席を一番下げた状態で、385mmとしました。また、後部座席は凹凸をなくしてフラットフロアを実現しています。これも新設計のプラットフォームの恩恵のひとつといえるでしょう。
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 新型デイズハイウェイスターX(2WD)の車体寸法(単位mm) *1日産測定値


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 足を組んでも余裕がある後部座席の空間

軽自動車初、「SOSコール」をオプション装備
 新型デイズには、軽自動車初の技術として先進事故自動通報システム「SOSコール」をメーカーオプションとして設定されました。「SOSコール」とは交通事故や急病などの緊急時に、位置情報やセンサー情報をデータ送信するとともに、専門オペレーターと音声通話が行えるというシステムです。連絡を受けた専門オペレーターは消防指令センターや警察に連絡をとり、緊急車両の手配をサポートします。なお、新型デイズの「SOSコール」で行われるデータ通信は事故発生時刻・地点・車両特定情報などに加えて、衝撃が加わった方向やシートベルト着用の有無など、車内の乗員の傷害状況が詳細に予測できるAACN方式です。
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 SOSコールの主な流れ


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 SOSコールのボタン操作



プロパイロットをはじめとした先進技術を搭載
 新型デイズにはアクセル、ブレーキ、ステアリングを制御することで、高速道路の同一車線上における運転支援を行うプロパイロットがグレード別で装備されています。これまでは、セレナやリーフなど、登録車に装備されていたプロパイロットですが、軽自動車への搭載は今回のデイズが初めてとなりました。また、意図せず走行車線を逸脱しそうな場合に注意喚起とステアリング操作を行うインテリジェントLI、クルマの周囲にある移動物を検知して表示とブザーで知らせるインテリジェント アラウンドビューモニター(移動物検知機能付)といった先進安全技術も軽自動車初搭載です。

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 プロパイロットのイメージ


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インテリジェント アラウンドビューモニター(移動物 検知機能付)のイメージ

画像:日産自動車ニュースルーム及び泉山撮影


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企画編集:三井住友海上火災保険株式会社 営業推進部・モーターチャネル推進チーム 
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