次世代自動車の普及によって…というくだりはよく聞きますが、一般的に普及したのならもう「次」世代じゃないのではないでしょうか。

パワートレインの電動化にしても、自動運転技術にしても、当然の流れのなかで普及していくわけですから、ことさら次世代だとかADVANCEDだとかと言うのもそろそろ考え直す必要があると思います。

逆に言えば、前世代=旧車を際立たせた方が現状にはマッチしているような気がしますし、ビジネスとしても面白いのではないかと考えています。

メーカー系ディーラーや、特化した技術やサービスを持っている自動車整備事業者でなくては難しい作業が多い次世代自動車を対象にして事業を展開するよりも、自らの強みを生かせるフィールドで戦うことを考えれば「旧車」にフォーカスする戦略もじゅうぶん検討に値すると思います。

まず背景として、日本の市場は平均車齢が伸び続けていることは周知の通りです。

乗用車だけの数値を見てもすでに8.6年だそうですから、街の中で旧車予備軍が増え続けていることがわかります(何をもって旧車というかの定義はそれぞれですが…)し、自販連のディーラービジョンを見てみると、消費税増税前に駆け込みで買うことを検討する層よりも、税負担が増えるなら、今所有している自動車をさらに長く乗ることを考える人が多いようですから、旧車ビジネスにはプラスではないでしょうか。

また、旧車パーツに関するニュースが増えていることも事業としての可能性が上がっていくことになると思います。

すでに日産GT-RのR-32、R-33、R-34のパーツは、NISMOから「NISMOヘリテージパーツ」として供給されていますし、マツダでもNAロードスターレストアサービスの開始に合わせて、初代ロードスターNA型の復刻パーツの販売を開始しています。

さらに先日お台場で行われた新型スープラの発表会では、トヨタ自動車の友山副社長から旧型スープラのパーツの発売も予定していることが発表されました。

自動車の進化の中で、次世代自動車に対応していくことも重要ですが、次世代というのはどこまでいっても「次」の世代ということですから設備投資と技術の習得、つまり負荷を伴い続ける宿命にあります。

この負荷対効果を考えた際に、対応すべき次世代を絞って強みを磨くことと、前世代=旧車への対応に投資を振り向けることも考えてみるのも戦略のひとつです。

いずれにせよ従来事業だけでは拡大が見込みにくいのであれば、自社の事業の次世代は、しっかりと腰を据えて舵を切って頂きたいと思います。


株式会社ジェイシーレゾナンス 代表取締役 松永博司
企画編集:三井住友海上火災保険株式会社 営業推進部・モーターチャネル推進チーム 
     エーシー企画株式会社