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シナジーデザイン株式会社

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146件中 1~5件を表示中

公開日時:2023-03-02 08:00

執筆者:その他の記事

日進月歩の最新テクノロジー『トヨタ/クラウン(SH35)』

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 日本初の純国産車として1955年にトヨペット・クラウンのブランド名でデビューしたクラウンは、「いつかはクラウン」というキャッチコピーに象徴されるとおり、国産乗用車の最高峰として国民に親しまれてきました。常に最新技術を搭載することで一歩先をゆくクルマとして日本の自動車技術をリードする存在でもありました。しかしながら、近年はセダンタイプの需要低下、輸入車やレクサスなど高級車の多様化などにより、クラウンを取り巻く環境が変化してきたのも事実です。その結果、クラウンの製品的な位置づけをはじめとするマーケティングなどの見直しが課題とされてきました。2018年のフルモデルチェンジから僅か4年、2022年7月に世界初公開された16代目新型クラウンはセダンをはじめ、SUVタイプ、クロスオーバー、そしてスポーツタイプの計4種類のモデルバリエーションが発表されました。その約2か月後の9月1日、クロスオーバーモデルが先行発売、従来とは異なるクラウン像に多くのファンが驚きました。従来の国内販売にとどまらず、本格グローバルモデルとして生まれ変わった新型クラウンを解説いたします。

セダンとSUVを融合させたクロスオーバーを先行発売
 新型クラウンのうち、先陣をきって発売されたのが、セダンとSUVを融合させたクロスオーバーモデルです。セダンモデルとの大きな違いは大径ホイールとタイヤの採用で、2022年1月現在発売されているAdvancedグレードには21インチのアルミホイールが標準装備されました。前モデルは18インチが最大径ホイールだったことを考慮すると、かなりインチアップしたことが分かります。その分ボディサイズも拡大しました。特に全高は75mmのサイズアップとしています。
 ボディカラーは、バイトーンカラーと呼ばれる配色を採用し、全12色のボディカラーが設定されています。

● ボディサイズ 全長:4,930mm(+20mm)・全幅:1,840mm(+40mm)・
        全高:1,540 mm(+75mm)
● ホイールベース  :2,850mm(-70mm) ※( )内は前モデル(4WD)比

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CROSSOVER G“Advanced・Leather Package”は21インチノイズリダクションアルミホイール&
センターオーナメントを標準装備。


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バイトーンカラーが印象的な新型クラウン。

2種類のハイブリッドシステムで構成。2.5Lモデルはクラストップレベルの燃費性能を実現
 クラウンのクロスオーバーモデルには2種類のハイブリッドシステムが設定されました。2.5LのA25A-FXSエンジンと2.4LのT24A-FTSターボエンジンにコンポーネントされたのはそれぞれ異なるハイブリッドシステムです。また両モデルとも電気式の四輪駆動方式E-fourを採用した4WD車で純ガソリン車、2WDの設定はありません。
 2.5LのA25A-FXSエンジンと組み合わせたハイブリッドシステムは前モデルにも搭載したTHSⅡをクロスオーバー用に最適化するとともに、新型アクアやレクサスRXで既に導入したバイポーラ型ニッケル水素電池を加えたシリーズパラレル方式です。なお、バイポーラ型ニッケル水素電池とは、集電体と呼ばれる金属部品の片面に正極、もう一方の面に負極を塗ったバイポーラ電極を複数枚パックにしたもので、電池の小型化、電池内抵抗の低減、さらには高出力化に寄与するという新方式の駆動用バッテリーです。これにより、従来と比べさらに高効率なハイブリッドシステムが実現、クラストップレベルの低燃費と静粛性を実現しています。

● 燃料消費率 2.5Lハイブリッド車:22.4km/L ※WLTCモード

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2.5Lハイブリッドシステム。
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バイポーラニッケル電池の構造。

トヨタ初のデュアルブーストハイブリッドシステムを採用した2.4Lモデル
 一方、T24A-FTSターボエンジンとコンポーネントされたのがデュアルブーストハイブリッドと呼ばれるシステムで、今回トヨタとして初採用されました。ターボエンジンとフロントモーターを直結し、リヤに大型モーターを装備、さらに駆動電池内の抵抗を低減するバイポーラ型ニッケル水素電池の効果を加えることで、太いトルクの走行を実現するというものです。オートマチックトランスミッションの加速では一般的にシフトチェンジのキックダウンが起こりますがデュアルブーストハイブリッドシステムではダウンシフトしないで加速するため、滑らかな応答性でスピードが伸びていきます。また、様々な走行状態に対応して、前後輪のトルク配分を行うことで、操縦の安定性を向上させています。

● 燃料消費率 2.4Lハイブリッド車:15.7km/L ※WLTCモード

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デュアルブーストハイブリッドシステム。

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システム構成図。

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加速のイメージ図。

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前後輪のトルク配分を100:0~20:80の間で制御。

コンパクト設計で走行性能をソリューションした新開発のフロント専用eAxle
 新ハイブリッドシステム、デュアルブーストハイブリッドの根幹をなす技術が、新たに開発された1モーターハイブリッドトランスミッションのeAxle(イーアクスル)です。駆動用モーターとインバーター、そしてトルコンレスの6速AT、Direct Shift-6ATで構成されたユニットです。このeAxleはフロント専用に設計され、モーターとトランスミッション、そしてエンジンとモーターの間にそれぞれクラッチを備える方式を採用しています。モーターとトランスミッション間は発進時の駆動力伝達を行い、エンジンとモーター間はEV走行時におけるエンジンの切り離しを行う機構とし、コンパクト設計と高い耐熱性が特徴です。この新ユニットにより、トルクフルな走行性能と優れた燃料消費率を両立、さらに応答性と静粛性、円滑性を高めた走行性能が実現しました。
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フロントeAxleは駆動モーターの内側に、
2つのクラッチを組み込んだコンパクト設計。


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Direct Shift-6AT。

後輪操舵機能DRSとトヨタ初のマルチリンク式リヤサスペンションの採用で操舵性、乗り心地を向上
 新型クラウンの高い走行性能を支える、もうひとつのシステムがDynamic Rear Steering(DRS)と呼ばれる後輪操舵機能です。低速域、中速域では前輪と逆相にする後輪の動きにより、ハンドリング性能を向上、高速域では前輪と同相にすることで、車両安定性を高めています。後輪操舵の技術は新しいテクノロジーではありませんが、自然な動きで操舵性を高めたトヨタのDRSは後輪操舵の新たな境地を開拓したといえるでしょう。
 リヤに用いたサスペンションは高出力のリヤモーターに対応するため、レクサスRXで初めて採用した高剛性マルチリンク式リヤサスペンションです。トヨタとしては、クラウンが初採用となりました。アッパーアーム、ロワーアーム、トウコントロールリンクで構成、フル防振サブフレームは前後間距離を大きく確保することで、剛性を確保しながら、上質な乗り心地を実現しました。
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車速に応じて操舵性をコントロールするDRSの効果。



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低速の軽快感と高速の安定性を両立。

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マルチリンク式リヤサスペンションの構造。

大径ホイールによるヒップポイントの高さを活かし、乗降性と視界の広さを向上
 新型クラウンのインテリアと居住性では乗り降りや運転のしやすさを優先したパッケージが実現しています。大径ホイールのメリットをフルに活かし、ヒップポイントを高くすることで、乗降時の腰の上下移動を少なく、自然な姿勢で乗り降りできる設計が施されました。また、ヒップポイントの高さは着座位置の視界も広げるとともに、後席においては1,000mmmのカップルディスタンスを実現、快適性を大幅に向上させています。
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高いヒップポイントを活かして自然な乗降を実現。

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り降りしやすいちょうどいいシートの高さが特徴。

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最小回転半径は5.4m。

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後席の膝まわりなどゆとりある室内空間を確保。

マルチマテリアル化で軽量化と高剛性を両立。運転支援機能はハンズオフ機能を採用
 上記の優れたパッケージ性を実現したのがTNGAプラットフォームによる高剛性ボディです。新型クラウンでは、ホットスタンプ材や超高張力鋼板、高張力鋼板、アルミの積極的な採用に加え、構造用接着剤の塗布範囲の拡大、溶接部位の工夫などによりボディ剛性を高める設計が施されました。アルミニウム合金はフロントバンパーとボンネットフードにそれぞれ採用。車体整備を実施する際の熱管理には注意が必要です(アルミニウム合金5000系の焼きなまし温度は250℃、加熱限界温度300℃、同6000系の焼きなまし温度は200℃、加熱限界温度250℃)。
 他方、運転支援システムには最新のトヨタセーフティセンス(標準装備:一部機能はオプション)とともにトヨタチームメイト(メーカーパッケージオプション)が装備されました。このうちアドバンストドライブ(渋滞時支援) (メーカーパッケージオプション)では、高速道路などでの渋滞時、一定の条件を満たすとハンズオフ機能を利用することが可能です。
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クラウンの軽量化・高剛性ボディ。 

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ボンネットフードはアルミニウム合金6000系を使用(画像はセダン)。

画像出典:トヨタグローバルサイト、トヨタニュ-スリリース、アイシン・デンソーニュースリリース

プロジェクトD 泉山 大
三井住友海上火災保険(株)営業推進部MC推進チーム 企画編集/エーシー企画(株)

カテゴリ:メカニック , 経営 , フロント

公開日時:2023-02-22 08:00

執筆者:その他の記事

自動車整備~令和の転換期~『自動車整備に関わる2023年度自動車行政の動き』

 国土交通省は2023年度の自動車行政を進めるにあたって4つの重点施策を掲げる。①GX(グリーントランスフォーメーション)の推進②持続可能な自動車運送事業・整備業の確立に向けたDX(デジタルトランスフォーメーション)と働き方改革③自動運転の実現に向けた環境整備と点検整備の推進など保守管理の徹底④自動車被害者救済・事故防止対策の推進―である。自動車整備業に関わる新たな施策や動きを整理してみよう。

 国交省は、2024年10月に開始予定の「OBD(車載式故障診断装置)車検」の環境整備として、2023度予算案に約2億7500万円を新規計上した。OBD車検における通信機能やアプリの作動状況などを検証して必要な対策を図る。

 OBD車検の本格始動に当たって、システム運用のトラブルを回避する狙いから、自動車技術総合機構は10月からプレテストを始める計画だ。

 電子制御装置の点検整備に欠かせないスキャンツール(外部故障診断装置)の導入支援として、2023年度予算案に4億8400万円を盛り込んだ。補助率はこれまでと変わらず購入価格の3分の1。1事業場当たり最大15万円を補助する仕組みとなる予定だ。

 自動車整備業の人手不足対策の推進に充てる2023年度予算案は2億9700万円。中には2022年度第2次補正予算の1億5千万円が含まれており、施策として生産性向上に関する先駆的な取り組みの実証調査を行うこととしている。

 全体の施策をみると、若年層への自動車整備士のPR強化などが挙げられているが、従来と異なる新たな施策など目立ったものは見当たらない。

 国交省は、昨年6月に業界団体関係者らで組織するワーキンググループを設けて、短期・中長期の時系列で人材確保や整備士の能力向上のための対策を議論している。3月末までに一定の結論を発表する予定で、その内容に注目だ。

 運輸支局などでの「紙処理」を中心とした自動車整備業に関する手続きのDXも進める。貼付書類や審査方法の見直し、申請・審査手続きのオンライン化で、事業者の生産性向上と行政の業務効率化を図る狙いだ。2023年度は貼付書類や審査方法などの最適化・効率化のための調査を実施。2024年度は電子申請システムの申請画面作成・テストを実施し、2025年度以降にシステムの更改、システム間の連携テスト、電子申請の運用開始を計画する。

 1月4日から導入した自動車検査証の電子化(電子車検証)を踏まえ、自動車検査登録手続きのデジタル化もさらに進める。具体的には、車検証閲覧アプリと民間事業者システムの連携や、OSS申請時に紙で提出している貼付書類を画像認識技術の活用で電子データ化することなどだ。

 国交省では関連府省庁と連携し、自動運転と電動車の普及に向けた施策も拡充する。

 4月から一定条件下で遠隔操作による「レベル4」自動運転車の公道走行を解禁する。昨年から全国9カ所で展開する自動運転車による地域公共交通実証事業を、今年は対象地域を大幅に拡充。地域交通における「自動運転実装元年」と位置付けて取り組む。

 トラック、バス、タクシーの電動車普及に向けて、事業者や自治体などに対する車両購入補助金などを2023年度予算案で大幅に積み増す。こうした政府による自動運転車の実用化と電動車普及の後押しをにらみ、自動車整備事業者も整備対応など将来への備えを加速する必要がありそうだ。(平野 淳)
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1月4日に導入が始まった電子車検証。国が進める電子政府への取り組みは今後、
自動車整備事業者にも大きく関わってくる。

画像出典:日刊自動車新聞社
日刊自動車新聞社
三井住友海上火災保険(株)営業推進部MC推進チーム 企画編集/エーシー企画(株)

カテゴリ:経営 , メカニック , フロント

公開日時:2023-01-26 08:00

執筆者:その他の記事

自動車整備~令和の転換期~『EVシフト本格化か、自動車産業・整備業界における2023年の将来展望』

 自動車の大変革を象徴するCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)。その潮流は2023年も勢いが増していくことは間違いない。今年4月にも「レベル4(限定領域での自動運転車)」の公道走行が解禁となり、電気自動車(EV)の市場投入も続いていく。整備業界では自動車検査証の電子化(電子車検証)が始まるほか、電子制御装置整備への一層の対応が求められる。足元では先行する事業者と様子見の事業者の差はどんどん開いている。自動車メーカーの動きに対して整備への影響はまだ先と高を括っていると足をすくわれかねない。

 昨年は「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞した日産自動車・三菱自動車の軽EVやトヨタ自動車のSUVをはじめ、海外自動車メーカーも続々とEVのラインアップを広げてきた。今年もまた中国の比亜迪(BYD)やメルセデス・ベンツなど海外勢を筆頭に新型EV発売を発表しており、新車市場でのEVの存在感は高まる一方だ。

 自動運転では2020年の「レベル3(限定領域での条件付自動運転車)」に続き、4月にもレベル4の自動車運転車の公道走行が可能となる見込みだ。レベル4は路線バスなど特定ルートを走行する移動サービスでの実用化が想定されている。そのほかにも、緊急自動ブレーキ(自動ブレーキ)の搭載義務化もあって、特定整備制度の電子制御装置整備の対象車両も年々増加している。運転支援機能や自動運転機能を持った車両の普及が着実に進んでいる。

 そうした中でEVが普及し始めて顕著なのが、自動車メーカーが販売方法をリース限定にして車両を囲い込む動きだ。これにより、系列外の整備工場にEVに入庫するまでにはまだ時間が掛かると、様子見の要因の一つとなっている。ただ、一部の業界団体や有力事業者は国内に販売網を持たない海外メーカーや新興メーカーに協力し、既に足元では整備を始めている。こうした事業者は既存の自動車メーカーの動きだけを見て時を過ごしている事業者とは対照的に、EV整備のノウハウを将来に向けて蓄積し始めている。

 自動運転関連でも事業者間の差は広がっている。2020年4月に施行された特定整備制度の認証取得の準備のための経過措置が間もなく1年を切る中で、昨年11月までの認証件数は約4万件と全体の4割強にとどまる。取得率に対する業界の見方を当初の7~9割から5割程度に見方を変える業界関係者も少なくない。この分野はスキャンツール(外部故障診断機)やホイールアライメントテスターなど設備投資の必要性もあり、技術の研さんだけでは対応が難しいのが実情。自社で対応するメーカーや車種を早期に見極めて、補い合える事業者と手を組むなどの戦略を立てることが必要になる。

 さらに整備事業者は整備技術の高度化への対応はさることながら、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)への対応を求められることは言うまでもない。また、今年1月(軽は2024年1月)にスタートした車検証の電子化をはじめ、人手不足の中で、デジタル化による業務効率の改善も必須となる。整備事業者は制度改正への否応なしの対応を迫られるのか、反対に制度改正を上手く取り入れて業務の拡大や効率化を図っていくのかの分かれ道に立っていると言える状況に今年もある。(村上 貴規)
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EVの新規参入組は現代自動車が協力整備工場網を構築する一方で、
BYDはディーラーによる整備網を構築する


画像出典:日刊自動車新聞社

日刊自動車新聞社
三井住友海上火災保険(株営業推進部MC推進チーム 企画編集/エーシー企画(株)

カテゴリ:経営 , メカニック , フロント

公開日時:2023-01-19 08:00

執筆者:その他の記事

日進月歩の最新テクノロジー『トヨタ/シエンタ(MXPL1#/MXPC10G)』

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 トヨタのミニバン、シエンタは2003年のデビュー以降、ファミリー層を中心に高い支持を得てきました。その人気の要因は従来のワンボックスタイプのミニバンとは異なるエクステリアに加え、日本の道路事情にマッチした5ナンバーサイズの経済性です。そのシエンタの人気を不動のものにしたのが、2015年のフルモデルチェンジでした。トレッキングシューズをモチーフにしたエクステリアデザインが、従来のミニバンのイメージを打ち破り、多くのファンを獲得。2019年8月と9月には登録車の販売順位(自動車販売協会連合会調べ)で首位となり、大きな話題にもなりました。今般フルモデルチェンジが行われたシエンタは2022年8月23日(火)、3代目として発売されました。10月の登録車販売順位では2位に躍進しており、再びブームを巻き起こしそうな気配です。

「シカクマル」コンセプトと最小回転半径の向上により、取り回しのよさをさらに充実
 アクティブなミニバンを象徴するシエンタらしいシルエットはそのままに、今回のフルモデルチェンジによるエクステリアは、「シカクマル」コンセプトを採用することでコーナー部を丸くするデザインが取り入れられました。また、ドアパネルには大きめのサイドプロテクションモールを施し、欧州車のエッセンスが加えられました。
 ノア・ヴォクシーが3ナンバー化し、今や5ナンバーのミニバンが貴重な存在になる中、新型シエンタは全長・全幅とも従来のボディサイズを継承。それにもかかわらず、最小回転半径は、前モデルの5.2mから新型では5.0mに向上、取り回しのよさをさらに高めています。

● ボディサイズ 全長:4,260mm(±0)・全幅:1,695mm(±0)・全高:2WD 1,695mm/4WD  1,715mm(ともに+20mm)
● ホイールベース:2,750mm(±0) ※()内は前モデル比
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全高以外のボディサイズは前モデルを継承。 

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最小回転半径を5.0mとし、小まわりのきく利便性を向上。

ダイナミックフォースエンジンを搭載し、クラストップレベルの走行燃費を達成
 新型シエンタは前モデルと同様に、ハイブリッド車とガソリン車の2種類のドライブトレインが設定されました。ともに1.5リットルのダイナミックフォースエンジンを採用、M15A-FXEエンジンとハイブリッドシステムを組み合わせたハイブリッド車の燃料消費率はクラストップレベルの28.8km/L(5人乗りタイプ・Xグレード)を達成。一方のM15A-FKSエンジンにDirect Shift-CVTを組み合わせたガソリン車もやはりクラストップレベルの18.4km/L(5人乗りタイプ)とともに高いレベルの走行燃費を実現しました(いずれもWLTC走行モード)。ガソリン車にはヤリスやノア・ヴォクシーでも採用された10速シーケンシャルシフトマチックを搭載し、走りの楽しさも魅力となっています。なお、4WDの設定はハイブリッドモデルのみで、電気式四輪駆動方式、E-Fourが採用されています。

●燃料消費率
 ハイブリッドモデル2WD:28.8km/L ・ 4WD:25.3km/L(ともに5人乗りXグレード)
ガソリンモデル2WD:18.4km/L(5人乗り) ※いずれもWLTCモード
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新型シエンタのシリーズパラレルハイブリッドシステム。 

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1.5Lダイナミックフォースエンジン M15A-FKS。

インテリアの充実で視界拡大による安全性と居住性、快適性をさらに向上
 新型シエンタのインテリアで目にとまるのが、水平基調のインストルメントパネルです。前方視界は広く、車両感覚のつかみやすさをサポートすることで、ドライバーの安全と安心感を高めています。また、近年の新型車にはインストルメントパネルにファブリックと呼ばれる布を貼りこむ仕様がトレンドになっていますが、新型シエンタにもファブリックが採用され、インテリアの質感を向上させています。
 室内の居住性ではボディの全長は前モデルと同じにもかかわらず、2列目空間の快適性を向上させました。前後シートに座る乗員のヒップポイントの距離を示すカップルディスタンスは最大1,000mm(従来型比+80mm)とし、クラストップレベルの居住性を確保。買い物かごを足元にそのまま置ける広さです。
快適性では後席に配慮した「天井サーキュレーター」を設定(メーカーオプション)、エアコンの暖房、冷房を効率的に後席側に循環させることで、前席と後席の温度の偏りを解消する工夫が施されています。
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運転視界イメージ(上)と天井サーキュレーター(下)。 

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広々とした後席空間を実現。( )内の数値は前モデル比。

ルーフ構造の改良などで乗降性をさらに円滑に
 新型シエンタでは乗降性や荷物の出し入れのしやすさという点にも着目し、家族の誰もが乗り降りしやすいよう改良が施されています。フロア地上高330mm(2WD)と段差のないフラットなフロアによる乗降性は前モデルから定評があり、新型モデルでも引き続き踏襲されました。また、パワースライドドア開口部は全高を高くすることに加え、ルーフをフラット化し、サイドガラスを立てることで拡大。開口部の高さは前モデル比+60mmの 1,200mmとし、標準的な成人男性が頭を下げずに乗り込むことを可能とするとともに、3列目シートへのアクセス性を高めました。
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新型シエンタのパワースライドドア。

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パワースライドドア開口部の寸法値。( )内の数値は前モデル比。

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ルーフ面のフラット化により開口部を拡大。

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成人男性の乗降も楽々。

バックドア開口部や荷室の改良によりラゲッジルームのユーティリティ性を拡張
 さらにバックドア開口部の高さも前モデル比15mm拡大し、ラゲッジルームにおいても、よりスムーズな荷物の出し入れが可能となりました。荷室高は7人乗りタイプの場合で前モデル比20mm、5人乗りタイプの場合、2列目シートのチルトダウン構造の見直しにより、デッキ部前モデル比40mmの拡大が実現。通学用自転車(27インチ)が楽々積載可能となりました。アウトドアやレジャーなどのシーンでもさらにユースフルなシーンが増えていきそうです。
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バックドア開口部を拡大。

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5人乗りタイプの荷室寸法値。( )内の数値は前モデル比。

高減衰タイプの接着剤とマスチックシーラーの採用で車内の静粛性を向上
 新型シエンタのプラットフォームは3代目にしてTNGA(GA-B)に刷新されました。主要な骨格を連結させた環状骨格構造とし、結合部の剛性を向上。また、車両の主要骨格に採用する構造用接着剤とルーフパネルの接合に用いるマスチックシーラーの一部を高減衰タイプにすることで、乗員が感じる振動の抑制を実現しました。従来の接着剤やシーラーよりもエポキシ樹脂の分子量を増加させることで、架橋密度を低減、分子運動によって起こる摩擦やエネルギー損失を大きくすることで減衰性を高めています。これにより、路面の段差などで生じるルーフの振動や降雨による振動を抑制、車内での会話の明瞭度を高めるなど、車内の静粛性を向上させました。
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新型シエンタに採用したTNGAの新プラットフォーム。

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高減衰材料の採用部位。

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高減衰材料のメカニズム。

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ルーフパネルの振動抑制のイメージ。

常に最新機能に更新する「ソフトウェアアップデート」機能と整備を行う際の留意点
 新型シエンタでは、無線通信または有線接続により、常に最新のソフトウェアに更新可能な「ソフトウェアアップデート」機能が実装されました。無線通信によるソフトウェアアップデートはOTA (Over the Air)と呼ばれ、近年のクルマに取り入れられつつある技術です。スマートフォンのOSやアプリのアップデートのように、電子制御されたプログラムの更新に用いられ、トヨタでは2021年4月より、「ソフトウェアアップデート」の搭載が開始されました。OTAによるソフトウェアの更新は、まず車載 EthernetでDCM に接続し、リプロソフト配信センターと無線通信を行い、アップデートされる仕組みです。トヨタの「ソフトウェアアップデート」では主に運転支援機能の更新が行われ、常に最新の機能に書き換えられます。
 「ソフトウェアアップデート」搭載車を整備する際にはいくつかの留意点があります。新型シエンタのOTAの関連作業としてフォワードレコグニションカメラの交換を行った際は、必ずソフトウェアのバージョン確認を行い、最新のバージョンでない場合は、更新を行う必要があります。更新には先述したOTAによる無線通信の他、有線によるアップデート(有線リプロ)があり、これらに対応するスキャンツールを接続して作業を実施します。アップデートの途中でバッテリーあがりが生じるケースや、電動ファンが作動して、電圧が低下または変動するとプログラムの書き込みが不能となりECUを破損させてしまうおそれがあります。このため、電気負荷となるシステムはOFFにし、補機バッテリーの電圧点検に加え、バックアップ用のバッテリーを準備して作業を実施する必要があります。
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センターディスプレイに表示されるソフトウェアアップデート通知画面。

画像出典:トヨタグローバルサイト、トヨタ自動車ホームページ
プロジェクトD 泉山 大
営業推進部MC推進チーム 企画編集/エーシー企画(株)FAX:03-3259-9505

カテゴリ:メカニック , 経営 , フロント

公開日時:2022-12-22 08:00

執筆者:その他の記事

自動車整備~令和の転換期~『新車供給の停滞に苦しんだ2022年の自動車産業を振り返る』

 新型コロナウイルス感染症との戦いが3年目となった2022年。自動車産業への影響もいまだ色濃く残る中、完成車の国内生産台数は8月、13カ月ぶりに前年同月の実績を上回った。登録車と軽自動車を合わせた新車販売台数も9月、15カ月ぶりのプラスに転じた。復調の兆しが出ているものの、コロナ禍前に比べれば、低水準であることに変わりはない。自動車メーカーの生産計画も一進一退を繰り返しており、当面は予断を許さない状況が続きそうだ。

 長期化している新車供給の遅れは、世界的な半導体不足が大きな要因だ。スマートフォンなど向けの先端半導体の需要拡大に押され、生産能力に限りのある車載用半導体が取り合いとなったことが響いた。一時期に比べて、車載半導体の供給量は増えているとみられるが、本格的な完成車の挽回生産を実現するまでには至っていないのが実情だ。

 新車供給の回復遅れの影響は、各方面に広がっている。新車の受注が積み上がり続けている自動車メーカーでは、一部のモデルで新規の注文を打ち切る動きが出てきた。また、全面改良を含め新たなモデルを発表しても、生産量が不透明なため発売時期を遅らせるケースも目立つ。新車が手に入りにくくなったことで、中古車ニーズが高まっているが、そもそも再販にまわる車両の発生も限られ、相場価格の高騰につながっている。

 こうした状況に追い打ちをかけているのが、歴史的な円安だ。1月、1ドル=110円台でスタートした為替相場は米国の利上げなどにより、急激な円安に振れた。10月には32年ぶりとなる1ドル=150円を突破。ここから落ち着きを取り戻しているものの、いまだ円安傾向にあることに変わりはない。

 円安によって日本からの輸出や、海外事業の為替換算益が増すメリットはある。しかし、海外から調達している原材料や部品の価格が上昇するデメリットも大きい。事実、想定以上の急激な為替変化を受け、自動車各社でもコスト吸収が困難として、多くが値上げに動いた。特に、タイヤなどでは年に2度の値上げに踏み切るケースも出ている。為替の動きが波及しやすい輸入車勢も、価格改定に追い込まれた。円安は流通の現場にも深くかかわっており、エンドユーザーの負担が増す事態にもなっている。

 一方、こうした難局を乗り越えるための動きも出ている。トヨタ自動車やデンソー、ソニーグループなどが出資し、次世代半導体の国産化に向けた新会社「Rapidus(ラピダス)」を立ち上げた。今後、さらにスピードが増す自動運転や電動車の技術開発や量産に後れをとらない体制づくりを目指す。また、政府も極端な為替変動には介入を辞さない方針を示しており、為替相場の安定に全力を挙げる考えだ。

 ただ、足元の新車販売のボリューム回復が遅れれば、数年先の整備入庫に響くのは間違いない。さらに、国産勢に加え、輸入車勢も消耗品の交換が少ない電気自動車(EV)の投入を増やしている。新車の供給遅れは遠からず解消するとみられるが、世界的なEVシフトは止まらない。近く到来する大きな構造変化に、整備各社も今から備えていくことが重要となりそうだ。(木村 優)
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ラピダスの設立会見

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三井住友海上火災保険(株)営業推進部MC推進チーム 企画編集/エーシー企画(株)

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