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 スバルの5代目フォレスターはガソリン車が7月19日、ハイブリッドモデルの「e-BOXER」は9月14日にそれぞれ発売されました。注目はなんといっても「e-BOXER」。モーターを用いてエンジンをアシストするマイルドハイブリッドを採用した新たなドライブトレインは、かつて XVに搭載されていたシステムから大幅な改良を加えました。

 「e-BOXER」は、今回発売されたフォレスターに初めて搭載され、今後スバル車に順次採用されていくとみられています。新型フォレスターの発売後の受注比率はガソリンの6割に対して、「e-BOXER」は4割。「e-BOXER」への関心の高さが窺えます。

 なお、フォレスターは先代モデルと比較し、全長で30mm、全幅20mm、ホイールベース30mmと、ボディサイズを拡大させています。


水平対向エンジンFB25を直噴化
 フォレスターのガソリン車に搭載されたエンジンは、先代モデルの水平対向4気筒2.0LのFB20から同2.5LのFB25へ一新されました。このFB25エンジンにも改良が加えられ、今回のフォレスターより、燃料システムが直噴化されました。これにより、燃焼効率を更に向上させています。
 また、スバルのクルマとしては初めて、熱マネジメント(水温制御)としてサーモコントロールバルブを採用し、素早い暖気とキャビン内の暖房性能の向上を行っています。低負荷時のラジエーターおよび内部回路への通水を制限することで早期の暖気を実現するとともに、オイルの粘度を下げることで、フリクションの低減も実現しました。さらに、エンジンの中高負荷時には低温制御によって、ノッキングを抑制し、最適点火時期領域を拡大させています。エンジン部品の9割を見直したことで約2kgに及ぶ軽量化を図るなど様々な見直しにより、出力とトルクを向上させています。
 
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  サーモコントロールバルブ


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  熱マネジメントの効果

スバルの新ハイブリッドシステム「e-BOXER
 ハイブリッドモデル「e-BOXER」には、水平対向 4気筒2.0LエンジンFB20を直噴化し、モーターと発電機を兼ねたインテグレーテッドジェネレータースターターに対応する「e-BOXER」専用エンジンを搭載しました。従来のFB20エンジンとの主な変更点はインテークマニホールドのチャンバー下部へ多機能ダクトの新設、補機ベルトシステムでは、振り子型のテンショナーを採用するなど、合計13箇所の改良を加えています。また、エンジンオイル油量(エンジンオイルのみ交換時)も従来の4.2L から4.0L に変更しているため、オイル交換を行う際には注意が必要です。

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  「e-BOXER」のシステムイメージ図(上)と走行制御イメージ図(下)

 また、従来のハイブリッドシステムでは、駆動用バッテリーにニッケル電池が使われていましたが、「e-BOXER」ではリチウムイオン電池を採用しました。リチウムイオンバッテリーのエネルギー効率は96%、ニッケル電池と比べ 6%もの効率化を実現しています。これによって、実用出力と EV走行の領域を広げることに成功しています。また、ハイブリッドシステムのひとつであるDC-DCコンバーターも小型化と改良が施されたことで、出力電流16A時の効率は、従来型から1.9%向上させ、91.9%としています。「e-BOXER」が優れている理由は、あらゆる電動化ユニットを見直すことで、更に環境性能と走行性能を高めている点にあるといえます。

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  モーター出力の向上の比較

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  EV走行頻度(㈱スバル実測値)


走破性と操作性を高めた新「X-MODE」
 スバルのSUVが高く評価される理由は、スバル独自の4WD制御技術「X-MODE」にあるといっても過言ではありません。雪道や悪路の走行時にスタックした際、「X-MODE」をONにすることで、エンジンやブレーキ、AWDシステム、VDC(Vehicle Dynamics Control)などを制御し、円滑な脱出を可能とします。 
 従来の「X-MODE」では、VDCをOFFにする際はスイッチを用いて解除する必要がありましたが、新型フォレスターに搭載された「X-MODE」はVDCスイッチを省略し、ワンタッチでDEEP SNOW・MUDモードに切り替えることが可能となりました。これにより、より適切なトルク配分の制御が行えるようになり、オフロードの走破性を更に高めています。なお、「X-MODE」の切り替えは、従来のスイッチボタン式から、ダイヤル式に変更となり、操作性の面でも使いやすさを向上させました。

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  「X-MODE」の制御イメージ


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  従来のスイッチ式からダイヤル式に変更

ドライバーの視界確保を高めた進化型ドアミラー
 クルマの安全性向上は、電子的な制御による高度な先進機能にばかり目を奪われがちです。しかしながら、安全を司る装置として地味な存在でありながらもドアミラーもまた日々進化を遂げています。
 新型フォレスターはバックする際にシフトをリバースに入れると、助手席ドアミラーの鏡面を自動で下方に傾ける「リバース連動チルトダウンミラー」をスバル車として初めて採用しました。後退時のリヤタイヤ側の視界を確保する安全機能のひとつといえます。
 また、鏡面にも安全への工夫が施されています。鏡面外側に広角ミラーを採用することでワイドな視界を確保しました。この他、リモコンキーやアクセスキーなどから、クルマのロック操作と連動したドアミラーの格納・展開機能も追加されています。これもスバルのクルマとしては初めて設けられたドアミラーの機能です。

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  リバース連動チルトダウンミラー
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  ワイドな視界を確保する助手席側ワイドミラー

ドライバーの顔を認識するドライバーモニタリングシステム
 ドライバーの顔認識を行うとともに運転中のモニタリングを行うドライバーモニタリングシステムは、スバルの新たな安全機能としてフォレスターに初めて採用されました。
 マルチファンクションディスプレイのバイザー部分に設置された専用カメラがドライバーを認識することで運転中の状態を推定、必要に応じてドライバーに対し、警報や警告を行うという機能です。例えば、ドライバーの開眼時間の割合から眠気レベルを算出します。また、ドライバーが顔を背けて運転を継続している場合は、わき見を運転と推定し、それぞれの推定レベルに応じて、メーター、警報音、またはマルチファンクションディスプレイを通じてドライバーや同乗者に注意を促します。

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  ドライバーモニタリングシステムの専用カメラ(左)と顔認識のイメージ(右)


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  ドライバーの眠気を認識し、メーターへの表示や警報でドライバーなどに注意を喚起します

 また、ドライバーモニタリングシステムには、ドライバーを認識することで、各ドライバーが設定するシートポジションやドアミラーの角度、エアコン設定などを自動で調整する「おもてなし機能」も付帯されています。専用カメラはドアの開閉に応じてドライバー個人の認識を行い、認識が完了するとマルチファンクションディスプレイにウェルカムメッセージ画面を表示。更に先述した設定の調整を行うというものです。ドライバーの登録は最大 5人まで可能です。

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「おもてなし機能」はドライバーが設定したシートポジション、ドアミラーの角度を自動調整する機能です

画像:株式会社スバル SUBARU GLOBAL MEDIA SITEより

株式会社公論出版 泉山 大
企画編集:三井住友海上火災保険株式会社 営業推進部・モーターチャネル推進チーム 
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